その尻尾をあげろっ

「尻尾が下がっちゃってるんだよね」
一通りの練習パターンを終了したところで、先生が言った。
「言うことはよく聞いてるんだけど、コッカーとしての良さが出てない。
楽しそうじゃないんだな」
が~ん。  やっぱりそうであったか。

救助犬練習デビューの、あの晴れた日。日差しは強く、暑かった。
初めて見る犬たち。
シェパード・ラブ・黒ラブ・ビーグル・ポメ・ダックス・スキッパーキなどなどなど。
全部で、18頭くらいだったかな。
アメコカもいた。
日差しも草いきれも何のその、楽しげでうきうき練習していた。
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遭難者捜索も、探しに行くのが待ちきれずに、「早くッ早くッ」と鼻を鳴らして催促する。
「探せッ」
「ヘイッ合点ッ」
弾丸のごとく吹っ飛んでいって、隠れた人の箱の前で、力一杯吠え立てる。
「見つけた見つけた見つけた!!」
「ソウッ!! すごいねーよく見つけたねーっっ!!」

ちがう。。。。。。  ちがうぞ。 この、
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足下で呆然と、この光景に見惚けてる犬と。
なんだろう、これって。。。。。
うーーん。
のんびり?  うん、それもあるかもしれないが、そうでなく・・・ ぼんやり? ぼけー?
近い。 では、なぜ「ぼけー」なのかと考えれば。
日頃の刺激が足らない。
まぁ、鍼灸院の看板犬をしているとはいえ、そんなに毎日目新しいことも起こらない。患者さんも、いつものマリちゃんがいれば幸せ。
散歩の刺激が足らない。
その時間の合間を縫って、せかすようにトイレトイレ、と出ていく散歩に、さほどの刺激があるとは思えない。ルートは変えてると言っても狭い練馬、そんなに変化無し。
訓練の刺激が足らない。
はいーーーーその通りでございます。
「ヒール」 「ゴー」 「ステイ」 「シット」 「カム」
確かに全部出来ます。ステイなんか、カメラ撮影のおかげでいくらでも出来ます。
ちっちゃいトリーツ1つで、何でもしてご覧に入れましょう。
こちらはコマンドをかけて見守ってればよいのです。
しかし。。。。

「犬にやらせるんじゃなくて、やってもらう。その気持ちが大事なんだよ。で、やってもらうためには、人の方が今の3倍動かなきゃ。楽しい~、訓練ってわくわくする、といろんな工夫をして、自分のテンションを上げて、走って、犬に次に何が起こるのか期待させなきゃ」

もしかして、それはマリちゃんの問題ではなく?と思ったとき、先生が手を伸ばした。
「はい、リード貸して。 マリちゃんっ」
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             ぴしっ わくわくわくっ

途端にマリちゃんが変わった。
反応が早い。動きが大きい。初めて会った、しかもリードを引いて命令をかけるコワモテのおっさんなのに、なんと目をキラキラさせて次のコマンド待っていることか。
尻尾もピン♪  トレードマークの、尻尾周りの白い毛が子鹿みたいにぴかぴか光る。
こんなに一瞬にして変わるものか。

溌剌と場内一周して、マリちゃんのリードは、ふたたび手元に帰ってきた。
どよん。   馬車がカボチャに戻ったかのように、ただの犬。
「分かった? マリちゃんは出来るんだよ~」
はいー。分かっております。。。。  

しかし、私にとってテンションを上げる、と言うのは、逆立ち1分間より困難です。
とほほ~。
目の前に難問山積み。
 「ローテンション飼い主 VS 吠えない・嗅げない・暗いの恐い の3×犬」
これからどうなるか、見守っていてくださいね~。
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